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ぼくたちは見つめあった。長い間見つめあったが、それ以上の議論をする気にはなれなかった。彼女の瞳の中には、もうぼくは映っていなかった。気がつかなかっただけで、最初から映ってなかったのかもしれない。ぼくにしたって、本当の彼女を見つめていたのかどうか疑わしい。付き合いだした頃はよく見つめ合ったが、あの頃の二人は何を見て微笑みあっていたのだろう?
彼女の視線は、ぼくの体を突き抜け、後方に横たわる別の次元の広大な空間を見つめていた。振り返っても、その空間はぼくには見えなかった。

(音の地図 より)
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音にまつわる中編が2つとその他の短編が1つ入っている本です。
作品自体が音にまつわるということを前提としていますが、音に関するエピソードはそこまで表立って出てきていないように思えます。エピソード自体は興味深いものがありますが、どちらかというとその傍にいる人間の話というものでしょうか。

『音の地図』、『グラスウールの城』、『ゴーストライター』の3つの作品から成っています。
一作目の印象が強すぎたせいか、後ろの2つの印象がどうも薄かったです。なので、感想は割愛させて頂いて、一作目の『音の地図』のみを。

大学生から付き合っているが、結婚まではどうしてもいかない彼女を持つ公務員の「僕」。気持ちの交わることのない彼女だが、自分にとっては唯一のものとしか思えず、ただ受け入れることしかできない。そんな生活の中で、肉体関係と自由な関係を持つ女性も存在し、自分の相手に対する価値観を感じ揺れ動く。
そんな中で学生時代の友達と偶然出会い、行動を共にするようになる。
いい方にというわけではないが、少しずつ前に進んでいく、というような話です。

抽象的で分かりにくいあらすじになってしまいましたが、作品自体はとても現実的なものです。
決して混じり合うことのない視線同士、というものがリアル過ぎて内臓をしめつけられたものです。笑

求める度合いが大きくなればなるほど、交わるものは少なくなっていく。
低い、それこそ誰もが持っているような価値観では人は誰とでも(というわけでもないですが)感覚を共有することができます。その逆は。

決して混じり合うことのないということはやはり存在します。むしろ、世の中の大多数はそれのように感じられ、なんだか悲しいことだらけのような感じがします。
人と人との関係性が、お互いの価値観に関する討論だけだとしたら、一体どうしたらいいんでしょうか。

作品からは脱線しましたが、そんなことを考えさせられるような作品でした。
ひとつだけ文句を言うとしたら、「で、その後はどうしたらいいんですか?」と思ってしまうような終わり方をどれもしています。「その先は考えて下さい」というスタンスだとしたら、それはそれで構いませんが、そこが一番重要なポイントなんじゃないかと思ってしまいますね。

しかし、心の琴線を震わされたという感覚はあります。
他の作品も読んでみたいという気持ちになりますね。

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